スタッフの雇用管理が円滑に行われ
「院長が診療に専念できる」職場づくりをお手伝い
「健全な経営はまず予防から」がモットーです
医療は、先生方とスタッフの実務の結集で成り立つ労働集約型の産業であると言えます。したがって、スタッフの雇用管理がぐらつけば、医院経営そのものが危うくなります。健全な医院経営のためには日頃の雇用管理が、つまり予防策が重要だと考えます。私は雇用管理のお手伝いによって、日頃の診療や診療報酬の請求、厚生局等への対応に孤軍奮闘する院長先生のご負担を軽減したいと思います。
私が幼少の頃は、医院・歯科医院で「なんでこんなになるまで放っといたんだ!」と患者さんを叱る医師・歯科医師の先生がいたものです。最近ではそういった場面にお目にかからなくなりましたが、今思えば、患者さんの体を思えばこそのストレートな表現だったと思います(今の先生方がそうした言い方をなさらないのは、表現方法が進歩したからでしょう)。
私は開業医団体に十余年勤務し、会員である歯科医院の院長先生からスタッフの雇用に関わる多くのご相談に対応させていただきました。また、現在では労働基準監督署で会社側、労働者側双方の立場の方から雇用に関するするご相談に対応しています。そこで痛感するのが、「雇用トラブルで“放置”は厳禁。初期段階で解決すること」がいかに大事か、ということです。
会社と労働者は、突然トラブルになるのではありません。必ず伏線があります。「給料の額は思っていた額と違う」「有給休暇が取れない」「残業代はこれが全額?」「今度採用した従業員は思っていたほどの能力がない」など、トラブルの端緒はあらゆるところにあります。
ではどうすればよいのでしょうか?トラブルの端緒を見逃さないで、早い段階で手を打つことです。さらに理想を言えば、トラブルの芽を予め摘んでしまうことです。これは日常的にスタッフに目を配り、「予防策」を講じないと実現できません。
医師・歯科医師の先生方で、「予防」の有用性を否定する方はいないでしょう。スタッフの雇用についても同じです。雇用トラブルを予防することにより、健全な医院経営が維持され、先生方が日常のご診療に専念できるようお手伝いいたします。
事務所名 | 戸井田社会保険労務士事務所 |
所在地 | 〒114-0003 北区豊島7-16-17-201 |
電話番号 | 03-6903-2309 |
代表者 | 戸井田慎也(といだ しんや)(登録番号 第13090502号) |
事業内容 | 労働・社会保険手続き、雇用管理のコンサルティング、給与計算、障害年金の請求代行 |
所在地 | 〒114-0003 北区豊島7-16-17-201 |
■電話受付
9:00~18:00 ※土日祝除く
■mail
office@toida-sr.com
第1号 侮るなかれ!雇用契約書(労働条件通知書)
皆さんは、スタッフを新たに雇用する際に雇用契約書(労働条件通知書)を渡していますか?「求人票にいろいろ書いたからいいんじゃないの?」―いえいえ、求人票では、例えば給与について「月給20~25万円」と記載し、スタッフもその求人票を見て応募したと思います。しかし、これでは具体的な給与を決めたことになりません。また「月給23万円」と口頭で伝えるのでは不十分です。労働条件は必ず文書で渡すことが法律で求められています。
なぜでしょうか?具体的な労働条件について、医院とスタッフとの認識のズレがあるとトラブルの発端になることが多いからです。だから具体的な条件を書面にして齟齬を防ぐのです。私はかつて相談を受けた中で、「月給の額は働き始めてから決める」といった取り決めをした事例がありました。こうした場合、雇い入れ後に院長側は「この人の働きでは月給20万円だ」と判断してもスタッフ側は「月給25万はもらえるはず」と思っていれば、当然給与支払いの日に早速もめますよね。
また、雇用契約書(労働条件通知書)は法令により、記載するべき事項が決まっています。具体的には、始業・終業の時刻、休憩時間、所定労働時間を超える労働(早出や残業のこと)、休日、業務内容、賃金の決定、計算・支払い方法、賃金の締め切り、支払の時期など結構多岐にわたります。
面倒な話に聞こえるかもしれませんが、厚生労働省のホームページから書面のひな型をダウンロードできます。さきほどお伝えした、法令で決まっている記載事項はすべて網羅しているので、ひな型を埋めるつもりで決めていけばよいのです。なお、いわゆる正社員(フルタイム)の場合とパートタイム(短時間勤務)の場合では書式が違いますので、ご注意ください。なおアドレスは以下の通りです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html
また、厚生労働省のひな型にさらに手を加え、「労働条件通知書兼同意書」として2部作成し、スタッフに労働条件同意のサインをもらって医院とスタッフがそれぞれ保管しているとさらに望ましいと思います。
第9号 辞めるスタッフに賞与って払うの?
(掲載スペースの関係で第2~8号はしばらく掲載をお休みします)
退職するスタッフから「賞与は貰えるんですよね?」と聞かれたら…
そろそろ冬の賞与の時期になりましたね。そこで質問します。例えば賞与支払い日が12月15日だったとします。その前日の12月14日に退職するスタッフに賞与を支払う必要があるでしょうか(医院の経営状態や本人の勤務成績と能力等に問題なかったとします)?
答えは
(1)支払日の前日まで問題なく働いたので払う必要がある
(2)支払日には従業員ではなくなっているので払う必要はない
実は法律的にはどちらもあり得るのです。スタッフの方は(1)と答え、院長は(2)と答えることが多いのではないでしょうか?まさにここが退職後の賞与をめぐるトラブルの原因なのです。ポイントは、これまでクリニックで支払い日に在籍している場合に限り払ってきたか、そしてそれを明文化していたか、です。
ではどうすればよいか。最も確実なのは雇い入れの際の労働条件通知書にきちんと記載することです。たとえば、「賞与 あり」だけでは不十分です。「賞与 あり。7月15日と12月15日の支給日に在籍する者に支給。金額は医院の経営状態、勤務成績、能力をもとにその都度決定する。算定期間:7月賞与は前年12月~当年6月末、12月賞与は当年7月~11月末」ぐらいの記載は必要だと思います。下線を付した文言をご覧ください。上記の質問の答えが(2)であることが予めスタッフにもわかりますね。
多くのクリニックでは、従業員が10人未満で就業規則がないケースも多いでしょう。だからこそ、労働条件通知書のこのような記載が必要なのです。従業員10人以上のクリニックでは就業規則にさきほどのように賞与支払いの要件を記載し、スタッフにきちんと周知してください。